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自動車部品関連の洗浄装置について
自動車部品の洗浄について、ひと昔前は「洗浄は生産に直接関わらない」と考えられ、あまり設備投資の対象とされてきませんでした。しかし、その結果として洗浄が不十分になり、異物(コンタミと呼ばれるごみ)が部品に残ったまま組み付けられた結果、自動車の不具合やリコールにつながるケースが実際に起きています。こうした背景から、現在の製造現場において、洗浄は非常に重要な設備として認識されるようになっています。この記事では、自動車部品関連の洗浄装置に関し、概要から洗浄方式、溶剤などに関して詳しく解説します。
【目次】
洗浄の定義
「洗浄」とは、「化学的・物理的な性質を利用して材料表面に付着している不要なものを取り除き、材料表面を清浄な状態に保つこと」と定義されます。 洗浄は、各プロセスでの処理前後に必ず行われるため、洗浄装置は 前工程で最も使用頻度の高い装置となります。
洗浄の必要性
洗浄は作り上げた製品を購入して頂くための最低限の条件です。
製品をきれいにすることにより、製品の機能上の保証をするとともに、異物混入を避けることになります。また、機能上の問題がないようにすることが洗浄が必要な理由です。
洗浄をするための対象物とは
大きく分けて、異物(コンタミ)除去と、油分の脱脂に分かれます。特に自動車部品加工においては、異物には切粉や金属バリや研磨粉、粉末または通常のごみなどが主になります。
異物に含まれる煤(すす)などのスケール除去も含まれますが、この場合除去は容易ではありません。 また脱脂には、水溶性or油性切削油、研磨液、防錆油、プレス油など様々な油分、溶剤などの除去が主になります。
洗浄するための溶剤の種類
洗浄により脱脂や汚れを落とすために、洗浄をする溶剤にはいろいろな種類があります。溶剤によってそれぞれ特性が違いますので、その都度どのような溶剤を選択するのかが必須となってきます。
特に自動車部品に関しては炭化水素系、水溶性系、トリクロロエチレン系というように分かれます。
特にトリクロロエチレンは有機塩素化合物の一種で、揮発性ですが火に近づけても燃えないのでフロン洗浄が撤廃になった後は特に洗浄液としてはかなり重宝がられておりました。しかし、環境中に排出されても安定しており、なかなか分解しないため地下水まで浸透して汚染の原因となっています。その上、発がん性物質があることがわかり現在ではあまり使用されなくなりました。
炭化水素系溶剤の特徴
炭化水素洗浄剤とは主に金属の切削やプレスなどの加工の際に用いる加工油の脱脂に用いられる洗浄剤です。主成分は石油からなる石化溶剤です。作製方法は石油を高度に精製処理する、もしくは化学的に合成することで作製されます。炭化水素の分子構造は様々で、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系に分類されます。これらは使用するシーンによって使い分けることができます。
≪メリット≫
・油汚れに対して洗浄力が極めて高い
・金属への腐食酸化の影響が極めて少ない
・溶剤が蒸留再生可能である
・水系、準水系と比べて乾燥性が大変良い
・油分溶解力が強い
・浸透性がよく細部の洗浄が可能である
・毒性が低い。
≪デメリット≫
・引火性がある
・石油類ですので消防法下で管理が必要
水溶性系洗浄剤の特徴
水系洗浄剤とは、水を主成分とする洗浄剤の総称です。その名前が示す通り、水を基材として、界面活性剤やアルカリ剤、酸、その他の添加剤を配合することで、様々な汚れに対応できる洗浄力を実現しています。
従来の洗浄現場では、トリクロロエチレンやジクロロメタンといった有機溶剤が広く使用されてきました。しかし、これらの溶剤は上記で述べていますが環境への悪影響や人体への有害性が指摘され、世界的に使用規制が強化されています。そうした背景から、環境負荷が少なく、作業者の安全性も確保できる水系洗浄剤の需要が高まっています。
水系洗浄剤の洗浄メカニズムは、主に界面活性剤の働きによるものです。界面活性剤は、油性の汚れを水に分散させる乳化作用や、汚れを部品表面から引き離す浸透作用を持っています。さらに、アルカリ性や酸性の成分を加えることで、無機物や金属酸化物といった特殊な汚れにも対応することが可能です。
このように水系洗浄剤は、環境性と安全性を備えながら、多様な洗浄ニーズに応える次世代の洗浄ソリューションとなっています。
≪メリット≫
・水で希釈して使用するため低コストである
・安全性が非常に高い
・毒性が低い
・危険物扱いがないので良好な作業環境を実現できる
・ほとんどの金属、樹脂に使用可能である
・様々な洗浄方法と組合せて使用が可能である
・酸化膜などの汚れの除去が可能である
・イオン性汚れを溶解除去できる
≪デメリット≫
・溶剤系と比較して、汚れを落とすのに時間がかかりやすい
・乾燥やすすぎの手間が生じる
・錆の原因となることがある
・洗浄の次にリンス工程というすすぎの工程が生じる
・乾燥をさせるのに時間がかかる
洗浄の方式の種類
洗浄の方式に様々なやり方があります。ここでは種類と特徴を紹介します。
超音波洗浄方式
超音波洗浄方式は、最もポピュラーな方法です。キャビテーション作用を利用して、大量に油分が付着している部品や、乾燥固着している部品などを超音波振動の加速度を利用して洗浄します。一般の金属部品や半導体などのパーティクル洗浄や埃やごみなどの洗浄にも使用されています。
≪メリット≫
・幅広い様々な汚れの洗浄に使用できる
・細部の洗浄に適する
・複数個の洗浄が可能
スプレー、シャワー洗浄方式
すすぎ工程や仕上げ工程などに用いられる方式です。
通常、汚れのひどい洗浄物の洗浄には向いていませんが、被洗浄物がデリケートな素材の場合には使われることもあります。
特にこの方式はスプレー、シャワーを正確に被洗浄物に当てる事が重要ですので、深い穴などにはノズルを入れて洗浄をするなどのことが必要にはなります。
ジェット洗浄方式
強力なポンプで洗浄剤、溶剤、水などを噴射させて付着した汚れを剥ぎ取る洗浄方式です。
比較的大きな被洗浄物に用いることが多く、塗料や土砂などの洗浄に適しています。
真空洗浄方式
被洗浄物に細かい穴などがある場合の洗浄に適し、真空ポンプでチャンバー内の空気を排出、液中の空気を取り除くことで洗浄力を向上させる洗浄方法です。コスト面で割高なため対象は限られています。
洗浄後の乾燥工程
洗浄を行った後には、乾燥工程を入れることが多いです。特に水溶性洗浄剤を使用する場合は、特に乾燥工程を設けないと、錆の原因にもなりますので、乾燥工程は必要不可欠です。
そして、通常はヒーターなどで乾燥をさせますが、時間短縮をする場合は真空乾燥機などにより、沸点を下がることにより早く乾燥をさせる事ができます。しかし、真空引きをする装置自体が高額ですので、よほどのことがない限り自動車部品のラインにはあまり採用はされません。
まとめ
近年、各自動車業界で自動車メーカーによるリコール問題が起きていると思いますが、多くは内燃機内や部品内の異物混入による機能不備によるものが大半であると思います。これは最終工程であります洗浄関係で確実に異物が回収されていないことが要因であると思われます。それ程、洗浄工程というものは非常に大切でありますので、適確に厳選をして頂き設備検討をして頂ければと思います。共和工機が導入検討のより良い提案をさせて頂きますので、ぜひ御用命の程、宜しくお願いいたします。
著者:株式会社共和工機 執行役員 第2営業部部長 渡瀬 栄治
駒澤大学法学部を卒業し1988年に入社。
メキシコ子会社に4年間勤務し、海外の事情及び輸出入関係にも携わりました。国内外の経験を活かし、幅広い分野のご提案が可能ですので、ぜひご相談ください。
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