NEWS

お知らせ・展示会情報

2025.11.04

/ お役立ち情報

new

レーザー加工とは?市場動向と種類・選び方のポイント

「レーザー加工機」と聞くと、大きな工場に置かれた巨大な設備を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、私たちの身近なスマートフォンの内部部品や自動車の板金部品、メガネのレンズ、さらにはステンレス製のボトルに至るまで、多くの製品がレーザー加工によって生み出されています。
高精度・高速・非接触という特徴を持つレーザーは、いまや製造業に欠かせない“光の工具”です。特に近年は、従来主流であった「CO₂レーザーからファイバーレーザーへと切り替えが進んでいる」ことも注目点のひとつです。レーザー加工は今、大きな変革期を迎えていると言えます。
本コラムでは、レーザー加工機の市場動向から仕組み、種類ごとの特徴、用途別の使い分け、そしてメーカー選びや導入のポイントまでを、詳しく解説します。

レーザー加工機の市場動向

世界のレーザー加工市場は年々拡大しており、その成長は製造業のデジタル化や自動化とも密接に関わっています。調査によると、2025年にはレーザー切断機市場だけで約6.85億USD、2032年には14.14億USDにまで成長すると予測されています。年平均成長率(CAGR)はおよそ10%を超える見込みで、非常に高い伸び率です。さらに、レーザー加工全般(切断・溶接・マーキングを含む広義の市場)では、2025年時点で約2851億USD(約29兆円)、2032年には6439億USDに拡大するという予測もあり、年平均成長率は12%を超えるとされています。調査レポートによって数値は多少異なるものの、レーザー加工市場が今後も確実に成長を続けることは間違いない と言えるでしょう。

この成長を支えている要因には以下のようなものがあります。

ファイバーレーザーの普及 金属への吸収性が高く、CO₂レーザーに代わり主流に。高出力化によって厚板加工も可能になり、効率性と信頼性の高さが注目されています。
自動化・スマート工場化 IoTやAIを活用したリアルタイム制御、自動化ラインとの統合が進み、Industry 4.0の一翼を担っています。
高出力化 例えば24kW級のファイバーレーザーは、従来機より処理速度が大幅に向上。生産効率を劇的に高めます。
多素材対応 金属だけでなく、樹脂・セラミックス・複合材料、さらには3D構造物への応用も広がっています。
AI活用 材料特性に応じて出力を自動最適化する技術や、故障を予知するメンテナンス機能の研究も進んでいます。

地域別に見ると、アジア太平洋地域(特に中国・日本・インド)が最大の市場であり、今後も高成長が期待されています。産業別では、自動車・EV向けの鋼板加工需要が牽引役となり、航空宇宙・精密機器・医療機器分野でも利用が広がっています。

レーザー加工機とは

レーザー加工機は、レーザー光を集中的に照射して材料を切る・削る・溶かす・刻印するなどの加工を行う装置です。従来の刃物やドリルの代わりに「光の刃」を使う、と考えるとイメージしやすいでしょう。

主な特徴

非接触加工 工具が材料に触れないため摩耗がなく、繊細な加工も可能。
高精度・高品位 熱影響範囲が狭く、ひずみや変形が少ない。
多様な材料に対応 金属、樹脂、木材、ガラス、セラミックスなど幅広い。
複雑形状に強い 微細な穴あけや3次元形状にも対応できる。

加工の仕組み

  1. 発振:レーザー発振器で特定の波長の光を生成。
  2. 伝送:光ファイバーやミラーを通じてビームを運ぶ。
  3. 集光:レンズで一点に絞り、エネルギー密度を高める。
  4. 加工:照射部分が瞬間的に加熱・溶融・蒸発し、切断や穴あけが行われる。
  5. 排出:アシストガス(酸素・窒素・空気など)で溶融物や煙を吹き飛ばし、仕上がりを整える。

レーザー加工機の種類と特徴

レーザー加工機はレーザーの種類によって得意分野が異なります。代表的なものを紹介します。

CO₂レーザー加工機

特徴 波長10.6µm(赤外域)。非金属に強い。
得意分野 木材、アクリル、ガラス、紙、布などの切断や彫刻。
メリット 加工跡がきれいで導入コストが比較的安い。
デメリット 金属加工には不向き。
導入例 看板業界やインテリア製作で幅広く利用。

ファイバーレーザー加工機

特徴 波長1.06µm。金属に吸収されやすい。
得意分野 鉄・ステンレス・アルミ・銅など金属加工全般。
メリット 高効率・長寿命・低メンテナンス。近年の主流。
デメリット 木材やアクリルなど非金属には適さない。
導入例 自動車部品の板金加工、精密板金工場。

YAGレーザー(固体レーザー)

特徴 古くから工業用で使われる。
得意分野 金属溶接や微細加工。
メリット 精密マーキングや小径穴あけに強い。
デメリット 装置が大きく高コスト。現在はファイバーへの移行が進む。

UVレーザー・その他

  • UVレーザー:波長が短く、熱影響を抑えられる。電子部品や樹脂の微細加工に利用。
  • 半導体レーザー:小型・低出力。プリンタや小型マーキング機で活躍。

用途別の使い分け

下記の表が用途別の使い分けになります。

用途 加工機の種類
金属加工が中心 ファイバーレーザー
アクリルや木材など非金属 CO₂レーザー
微細加工や特殊用途 UVレーザー、YAGレーザー

選定のポイントは「加工する素材」と「求める精度・スピード」。また近年はIoTやAIと組み合わせた“スマート加工機”として進化しており、自動化ラインとの統合も進んでいます。

代表的なレーザーメーカー

海外メーカーと国内メーカーのそれぞれ代表的なメーカーを挙げます。

海外メーカー

メーカー名 特徴
ドイツ Trumpf 世界的リーダー。高性能レーザーと自動化ソリューションに強み。
スイス Bystronic 板金加工トータルソリューションを提供。操作性が高い。
中国 Han’s Laser 幅広いラインナップと価格競争力で急成長。
アメリカ IPG Photonics ファイバーレーザーの世界的専門メーカー。
アメリカ Coherent 産業用から研究用まで幅広い。
イタリア Prima Power 2D/3D対応機や自動化に注力。

国内メーカー

メーカー名 特徴
Amada 板金加工の国内トップシェア。切断+曲げ+自動化まで一貫対応。
Mazak(ヤマザキマザック) 複合加工機や旋盤と組み合わせた効率化が特徴。
三菱電機 AIアシスト機能や安定品質で支持。
Panasonic EV電池やモーター部品向けの精密溶接に強み。
日立 レーザーマーキング装置に特化し、電子部品分野で信頼性が高い。

機種選定のポイントと失敗例

レーザー加工機は高額な設備投資となるため、選定を誤ると大きな損失につながります。実際によくある失敗例として

  • 金属加工を中心にするのにCO₂レーザーを導入してしまい、加工効率が低かった。
  • 導入コストだけを重視した結果、ランニングコストやメンテナンス費用が予想以上にかさんだ。
  • 海外メーカーを選んだが、地域でのサポート体制が弱く、修理対応が遅れて生産が止まった。

こうした失敗を避けるためには、素材・用途・サポート体制の3点を軸に比較検討することが重要です。

まとめ

レーザー加工機は、金属・非金属を問わず幅広い分野で活躍し、今後さらに多様な産業で利用が広がることが予想されます。ただし、種類やメーカーによって特性が大きく異なるため、導入時には十分な比較検討が必要です。
当社では、国内外の豊富なメーカー製品を取り扱い、それぞれの強みを踏まえてお客様に最適な一台を選定・ご提案できる体制を整えております。
「どの機種を選べばいいかわからない」「最新のファイバーレーザーにすべきか迷っている」など、導入や選定でお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。

著者:株式会社共和工機 第5営業部 2課課長 室伏 滉平
2011年に入社。
現場の経験をもとに分かりやすくお届けできればと思います。導入や選定で迷ったときは、ぜひお気軽にご相談ください。

商品やサービスに関するご相談・ご質問がある方はこちらのメールフォームよりお問い合わせください。